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不器用な夫
第4章 実家
歴代の当主で正妻に嫡子が出来ず、妾に嫡子が出来たからと正妻の発表に妾が正妻と入れ替わり公表された事実もある。
子さえ成せば…。
そんな考えだけで国松家に来たがる女性達。
僕はそんな女性には興味を示さない。
わかってて父はハコを選んだ。
無邪気で純粋なハコならばと父はハコに期待する。
母も若かりし頃はそうだったのだろう。
呪われし父はハコの中にそんな母の面影を見出したのだと感じる。
僕は父とは違うと思いたい。
「食事にしよう。」
僕の考えを見透かす父が僕の肩を叩く。
お前も国松家の当主になるのだからと父の手が僕の肩に重くのしかかる。
「父さん…。」
「三浦家の娘さんが来れば話はする。僕はこう見えてちゃんと経済学者だよ。」
「ありがとうございます。」
国松家の嫁予備軍として果歩を受け入れるつもりは父にはない。
あくまでも今の国松家の嫁はハコである。
茅野家の家族はバラバラだが事業としては今一番安定した一族である。
国松家にハコを嫁に出せば茅野家はますます事業の発展をする一族になるだろう。
万が一、ハコが国松家から逃げ出す事となってもハコは何一つ不自由のない茅野家に帰る事が出来る。
そこまで父は考えて僕にハコを与えた。
僕はただそれを受け入れる。
僕は国松家の男だから…。
ハコを不幸にだけはしない。
僕はそう考えて父の後に付いて歩く。
この人は母を不幸にした人…。
僕は父のようにだけはならないと願う。
呪われし一族。
僕はその事実をまだハコに告げられないまま長い国松家の廊下を父と歩く。
ここが僕の生まれ育った実家なのに…。
他人の家のように感じる冷たい国松家の廊下を父と歩きながらこの呪われし国松家から早く逃げ出す事ばかりを考えてた。