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不器用な夫
第4章 実家
「いつも通りによくしてくれてるよ。」
「左様でございますか…。」
東がそう呟きながら父が居る書斎の扉をノックする。
「旦那様、坊っちゃまがご用です。」
僕が来た事だけを中に居る父に伝えて東が僕の後ろへと下がる。
「要か…、葉子君はどうだ?」
父がハコとの事を聞いて来る。
「今は母さんとサロンに…。」
「そうか…、お前としてはどうだ?」
「彼女なら良き妻、良き母になると思いますよ。」
「うむ…。ならしっかりと頑張りなさい。」
この先、ハコを不幸にするなと言わんばかりに父は言葉少なく僕に釘を刺す。
全ての元凶は貴方だよ。
父にそう叫びたい僕は言葉を飲み込む。
「父さん、三浦家はご存知ですか?」
「三浦家?ああ…、焦りから無理な全国展開をして事業に失敗したやつだな。」
経済学で学者である父は普通の新聞に載るニュースには疎いが経済新聞の載る情報は隅々まで把握してるという人だ。
「その娘が僕の生徒です。」
「ほう…、それが何か?」
「もし父さんに助けを求める連絡があれば…。」
「それは葉子君の望みでもあるのか?」
「いえ、ハコは…。」
僕は口篭る。
果歩とは比較的に仲が良いハコだったが果歩が国松家の正妻の座を狙う1人として宣言したのだとすればハコは三浦家が潰れて果歩が学校から立ち去る事を望むかもしれないと僕は考える。
まだ果歩はハコと同じ子供だ。
単純に国松家の嫡子を身篭れば三浦家が安泰だとしか考えてない。
国松家にはそんな形で嫁入りを望む女性が決して少なくはない。
だからこそ、国松家での婚姻は何かと世間に対して伏せられる。