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不器用な夫
第8章 当主
曽我が…。
藤原家として…。
混乱する僕の目の前には確かに藤原家だと名乗る曽我が居る。
藤原家の事は父から聞いている。
2000年の歴史を持つ旧家。
そして現存する『イかせ屋』の本家。
父は僕に国松家の婚姻で行き詰まった時は必ず藤原家を頼れとだけ言った。
まだ僕は国松家の婚姻どころか普通の恋愛すら見い出せてない。
今は自分が放つフェロモンをコントロールする生活に慣れる事だけで精一杯だ。
孤独で寂しく地味に生きる事を身につける。
その道中である僕はまだ藤原家を頼る予定など全くない状況だというのに、その藤原家だと名乗る人物が向こうからやって来た。
しかも彼は曽我 昌だ。
彼が藤原家を名乗る意味すらわからない。
戸惑う僕の顔をゆっくりと彼が撫でる。
「驚かせたなら謝る。俺の母が今の藤原家の当主の姉だ。だから…、藤原家の次期当主は俺が継ぐ予定になってると言えば信じてくれるか?」
曽我が必死の形相で話をする。
彼が藤原家だと嘘を付く理由は見当たらない。
だとすれば彼が言う事は事実なのだろう。
藤原家は何故か嫡子制ではなく一族の中から養子を取る事で滅びを回避する。
国松家からすれば、それは羨ましいやり方だ。
国松家の場合、一族とはいえ国松の能力を持たない者を当主として認める訳にはいかない。
藤原家は『イかせ屋』としての能力を先代から学ぶ事で後天的に跡を継ぐ。
国松家のフェロモンを放つ能力は先天的なもので先代から習ったからといっておいそれと身に付くものではなく、嫡子のみに備わる能力だからと遺伝を残す事が必須になる。
そんな2人が真っ直ぐに見つめ合う瞬間が来るとは僕は夢にも思わなかった。