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チカちゃん先生のご褒美
第5章 チカちゃんの手は滑り止めの手
「どこか、一校でも……滑り止めでも、受かったら」
そのチカちゃんの約束から、数ヶ月経った。
俺も野際も、必死で勉強した。模試の度に成績は急上昇。最初の頃有ったE以下の判定は、姿を消していった。
親は最初は驚いていたが、そのうち泣いて喜んで、全面的に応援してくれた。それまでのそっけなさが嘘のようだ。
先生方も、大騒ぎだ。成績の良い生徒はたくさん居るけど、こんなに急上昇するのは珍しいらしい。自由登校になる前に挨拶に行った職員室で激励される中、ひっそり小さく拍手して頷くチカちゃんに視線を送った。
……チカちゃん。
全部、チカちゃんのお陰なんだ。チカちゃんの為に、チカちゃんの約束してくれたご褒美の為に、頑張ってるんだから。
俺と野際の大躍進はチカちゃんのお手柄なんです!……と、言えたら良いのに。
言えない、絶対に。言ったらチカちゃんがクビになる。
言えない分、合格という恩返しを、一つでも多く返さないと。
自由登校になって学校以外で勉強する事になってからも、俺は真面目に勉強した。チカちゃんの夢や妄想で抜いても、気は抜かなかった。
試験は、ちゃんと手応えが有った。
ヤッたらヤッただけの……じゃない、やったらやっただけの、成果が有るんだな。
受験の応援だけじゃない。やってもやらなくても同じだと思っていた自分を、チカちゃんは、変えてくれた。
チカちゃんに、一秒でも早く、合格の報告をしたい。
俺は試験のその日からも、改たな気持ちで勉強を重ねた。