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僕の美しいひと
第7章 僕の美しいひと
「貴和子さんの旦那様はどのような方ですか?」
貴和子の瞳が輝き出す。
「まだ駆け出しのヴァイオリニストよ。
たまたま聴きに行ったオーケストラでピンチヒッターに第一ヴァイオリンを任されていたの。
その音を聴いた時に閃いたの。
彼は誰よりも才能がある…て。
…このひとはきっとこれから素晴らしいヴァイオリニストになる…て
…私には分かるの…。
いいえ、私だけに分かるのよ…」
小娘のように白い頬を染めた貴和子を好もしく見つめる。
「…貴和子さんの一目惚れですね。
…幸せな方だな、旦那様は」
貴和子がグラスを置いて、郁未を見上げた。
「…彼は…少し貴方に似ているわ」
「僕に?」
その長い睫毛が優しく瞬き、美しい瞳が細められた。
「…繊細で清潔で気が弱くて…でも…誰よりも優しいの。
…誰に対しても優しくて…困ったひとを見ると放っておけないとても優しいひと…。
…それから…自分の幸せより、好きなひとの幸せを優先するひと…」
「…貴和子さん…」
「…だから好きになったの…。
このひとを、私が守らなくちゃ…て…」
そっと囁くと、その白い手を郁未の頬に伸ばした。
そして、郁未の心を慰撫するようにそっと包み込んだ。
「…で?貴方は?
…貴方の恋は、どこで迷子になっているの?」
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