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僕の美しいひと
第7章 僕の美しいひと
車が赤坂の霊南坂教会に着くと、郁未は緊張のあまり、ふと不安になった。
「…どうしよう。こんな格好で来てしまった…」
仕立ては良いものだが、普段着の水色のストライプのシャツに普段着の濃紺のスラックスだ。
もちろんネクタイも結んでいないし、ジャケットすら羽織っていない。
「こんな格好で、プロポーズするなんて…。
せめて、ジャケットくらい着てくれば良かった…」
頭を抱える郁未に、鬼塚は子どもに語りかけるように諭した。
「いいか、郁未。
お前はこれから上品に礼儀正しくプロポーズするためにここに来たわけじゃない」
「うん」
「今まさに式を挙げようとしている新郎から花嫁を奪いに来たんだ。
世間一般的に言えば、とても非常識でとんでもない暴逆行為をしに教会に乗り込むんだ」
「うん、そうだね」
「分かっていればそれでいい。
格好なんてどうだっていいんだ。
お前はどんな時も綺麗だ。
お前の真の言葉を、清良にぶつけてこい。
…俺はここで待っている。
お前たちが追われる羽目になった時のためにな」
そうして、にやりといつものように笑ったのだ。
「…どうしよう。こんな格好で来てしまった…」
仕立ては良いものだが、普段着の水色のストライプのシャツに普段着の濃紺のスラックスだ。
もちろんネクタイも結んでいないし、ジャケットすら羽織っていない。
「こんな格好で、プロポーズするなんて…。
せめて、ジャケットくらい着てくれば良かった…」
頭を抱える郁未に、鬼塚は子どもに語りかけるように諭した。
「いいか、郁未。
お前はこれから上品に礼儀正しくプロポーズするためにここに来たわけじゃない」
「うん」
「今まさに式を挙げようとしている新郎から花嫁を奪いに来たんだ。
世間一般的に言えば、とても非常識でとんでもない暴逆行為をしに教会に乗り込むんだ」
「うん、そうだね」
「分かっていればそれでいい。
格好なんてどうだっていいんだ。
お前はどんな時も綺麗だ。
お前の真の言葉を、清良にぶつけてこい。
…俺はここで待っている。
お前たちが追われる羽目になった時のためにな」
そうして、にやりといつものように笑ったのだ。