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僕の美しいひと
第2章 夜の聖母
…窓硝子から夜の冷気が忍び込む。
硝子に映る自分の姿に、我に帰る。
清良の部屋の灯りは消えていた。
郁未は、かつて愛し合った優しい女の面影を愛しみを込めて思い出していた。
…貴和子はあれから一人で欧州へと渡ったと、風の便りで聞いた。
あの夜の情事は、まるでひと夜の幻のようだった。
けれど、確かにあのひと夜は存在したのだ。
貴和子とのひと夜ののち、郁未は少しずつ周りが見えるようになった。
…自分が出来ることは何か…。
それを考えたときに、戦争孤児たちに自然に目が行ったのだ。
幼い子どもたちが身を寄せ合い暮らしている様や、中にはやくざな大人たちに騙され、悪に手を染めている様に胸が痛んだ。
…僕が戦争中に犯した罪を償うには、この子どもたちを救うことしかないのではないか…。
そう思いが至ったとき、初めて目の前に微かな光が差したのだ。
…ひとつずつ、償ってゆこう…。
僕が出来ることを、ひとつずつ大切に想いを込めて…。
…そうしたら、いつか鬼塚くんに会えるかも知れない…。
郁未は、漸く立ち直るきっかけが掴めたのだ。
…すべてはあの美しいひとのお陰だ。
…僕の美しい夜の聖母…。
郁未は胸に浮かんだ貴和子の艶やかな面影に笑みを送り、静かにカーテンを閉めた。
硝子に映る自分の姿に、我に帰る。
清良の部屋の灯りは消えていた。
郁未は、かつて愛し合った優しい女の面影を愛しみを込めて思い出していた。
…貴和子はあれから一人で欧州へと渡ったと、風の便りで聞いた。
あの夜の情事は、まるでひと夜の幻のようだった。
けれど、確かにあのひと夜は存在したのだ。
貴和子とのひと夜ののち、郁未は少しずつ周りが見えるようになった。
…自分が出来ることは何か…。
それを考えたときに、戦争孤児たちに自然に目が行ったのだ。
幼い子どもたちが身を寄せ合い暮らしている様や、中にはやくざな大人たちに騙され、悪に手を染めている様に胸が痛んだ。
…僕が戦争中に犯した罪を償うには、この子どもたちを救うことしかないのではないか…。
そう思いが至ったとき、初めて目の前に微かな光が差したのだ。
…ひとつずつ、償ってゆこう…。
僕が出来ることを、ひとつずつ大切に想いを込めて…。
…そうしたら、いつか鬼塚くんに会えるかも知れない…。
郁未は、漸く立ち直るきっかけが掴めたのだ。
…すべてはあの美しいひとのお陰だ。
…僕の美しい夜の聖母…。
郁未は胸に浮かんだ貴和子の艶やかな面影に笑みを送り、静かにカーテンを閉めた。