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終わらない二人きり。
第1章 終わらない二人きり。
「じゃあ――今日の日付は?」
質問を投げる男の口角が、わずかに上がる。
「2019年3月26日」
「即答だな。さすが」
――忘れるはずがない。
俺はちらりと、壁にかけられた日めくりカレンダーを見た。『2019年3月26日』と表記されている。
無論――ここに来てから、一回もめくられていないが。
この部屋に来ていったい何日が経ったのか――この生活が始まった最初の頃は、日付をカウントしたりもしたが、それもやめてしまった。
金なんて、必要ない。
この世には、住む家も食料も着る服も、溢れ返っている。持ち主の事情なんか知ったこっちゃない。が、それらを有難く頂戴し、俺らは毎日を生きている。
最初こそ、他人の物を盗む行為に罪悪感を覚えたが
今はもう――何も感じない。