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終わらない二人きり。
第1章 終わらない二人きり。
都会の朝――
空に飛び出るように立つオフィスビルやマンション。
忙しなく行き交う人々――そこにあるのは紛れもない、正常な日常だった。
駅前にある円柱のファッションビル。そのビルの外壁に設置された大きなモニターに、女性アナウンサーの顔が映し出された。
『――おはようございます。
本日は2049年3月26日です。
まず、最初のニュースです。
会社員の多田守(まもる)さんと、吉峯雅也(まさや)さんが、行方不明になって、今日で、30年が経ちました。
二人は今から30年前、エレベーターの故障によりエレベータ内に閉じ込められたと思われましたが、救助が駆けつけると、中には誰もおらず、未だに行方が分からなくなっています。
この不可思議な現象は、当時日本中を驚かせましたが、時空の歪み――つまり、二人は、時が止まったどこか別の時空に飛ばされてしまったのではないか、と考えられており、未だに世界中の科学者がこの事件についての研究をしています――』