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遅すぎる初恋
第8章 酔う
「え、あ、いや、そんなんじゃなくて!! ていうか、そもそも彼女いないし、えと……」

焦ると考える力がぶっ飛ぶらしい俺は自ら余計なことを喋っていた。

「ふぅん、彼女いないんだ。じゃあ、アレは」

佐伯さんが何を思い出したのかは一目瞭然。
俺は残りが半分になったビールを全て飲み干した。

「それは! わ、忘れてください……」

「宮内さん、良い飲みっぷりだね。もう一杯飲む?」

明日も仕事だっていう考えはどこかに行ってしまった俺はうなづいてて、数秒後には同じビールが運ばれてきた。

「忘れるのはいいんだけど、彼女じゃないのに誰にってちょっと気になるよね」

悪気はないとは思う。思いたい。

「佐伯さんって、いい性格してますよね」

「よく言われるー! 好きな子イジメたくなったり、からかいたくなったり、付き合った子には言うこと聞かせたくなったりするんだよね。焦ったりしてるの見るのも好きだし」

それってよく姉ちゃんたちが言ってた『俺様』に近い。
俺が最も苦手なタイプ。

「だから、今も宮内さんが焦ってるのを見て、もっと問い詰めたくなっちゃってる、かも」

営業スマイルとは違う、意地悪い笑顔。
変なヤツに捕まった……。
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