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遅すぎる初恋
第9章 自覚
酔ってるとはいえ、自分でも何であんなことを言ったのかわからない。
声を聞いたら、たった数時間なのに、会えなかったのが淋しかったのと嬉しかったので気持ちがコントロールできなくなった。
紫音は「わかった」と言って、場所を伝えてから電話を切った。

店に戻り、佐伯さんに用事ができたことを伝えた。

「あーあ、残念。宮内さんを振り向かせたかったのにな」

「あ、あの、佐伯さん?」

「職業病みたいなもんだよ。顔色とか表情である程度わかっちゃうんだよね。宮内さんの用事って、キスマークつけた彼とだよね」

そこまでバレてんのかよ。
職業病とはいえ、恐ろしすぎる。

「今日は付き合ってくれてありがとう。またお店に来てよ。その時には色々聞かせてね」

明るく手を振る佐伯さんに会釈して俺は店を出た。

出ると、ドアの近くに紫音が立っていた。
それだけで、気持ちが上がる。
俺、一体どうしたんだよ。

「和哉さん、髪切ったんだ。それに眼鏡じゃない?」

「別に、お前に言われたわけじゃねえけど、たまにはコンタクトでもいいかなって。髪は元々切ろうと思ってただけだし」

ジッと見られて落ち着かない。
ドキドキする。

「こ、コンタクトは去年までつけてたんだ。けど、仕事で、」
「和哉さん、落ち着いて。和哉さんって焦るとよくしゃべるよね」

子供をあやすように頭をポンポンとされると、大垣先輩のときとは違って、心拍数が上がる。
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