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お良の性春
第2章    春風乱舞 恋のつむじ風
 一方、源一郎の気持は、お節の予想を超えて驀進していた。

 漠然としたお良へ好意は、あの日を境に激しい恋心へと急変。
 源一郎はお良を欲しいと思った。
 美しいお良の裸身を思い出すたび体が燃える。抑さえきれない情欲が源一郎を襲う。

 (嫁にしたい)

 お良との結婚を決意するや、源一郎はその日のうちに、己の気持を父に伝えた。

 「お良は薬問屋伊兵衛の娘か」

 「はい、左様にございます」

 父の問いに源一郎が答える。
 仙太郎は妻お栄に目線を移す。
 お栄は無言のまま、柔らかな目線を夫に返す。

 「娘の気持は確かめたのか」

 「いえ、父上の承諾もなくことを進めて、先方に迷惑をおかけするようなことがあってはと」

 「分かった。お栄とも相談したいことがある。そなた、まずは娘の気持を確かめるがよい」

 父のその言葉に、源一郎の顔がパッツと明るくなった。
 即決即断である。
 その夜、仙太郎はお栄の話を聞いた。

 「お良は才色兼備。その上気立てもよく快活。少し気の強いところなどは、源一郎のような頼りない息子にはうってつけの娘」

 お栄は口を袂で隠すとクスクスと笑った。

 「なにが可笑しい」

 「よく似た親子かと」

 二人は思わず吹き出す。
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