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お良の性春
第2章 春風乱舞 恋のつむじ風

父の言葉に喜んだものの、源一郎はいささか気持が重かった。あの日のことを考えると、お良殿に合わせる顔がない。
源一郎は薬問屋の店前に立った。しかし、どうにも足がすくんで前に進めない。
伊兵衛殿の顔が浮かぶ。
父も一目置く伊兵衛は、豊富な知識、明晰な頭脳、先を見通す洞察力、どれをとっても、そんじょそこらの侍の比ではなかった。
(あの罰ゲームの一件が伊兵衛殿の耳にでも入っていたら)
お良への想いが強くなればなるほど、源一郎の心に臆病風が吹いた。
思案に暮れる源一郎に神が救いの手を差し伸べる。
見れば、寺の片隅に座っているのはお良にお節。
好機到来。天の恵みか、神様の計らいか。意を決した源一郎は二人に近づく。
「お良さん」
その声に振り返った二人。
お良の顔が見る見る赤くなる。
黙って会釈を返すお良。
そのお良の顔をじっと見つめて棒立ちの源一郎。
初夏を思わせるような強い西日を受けて、二人のうなじに汗が滴る。
「お良さん」源一郎はもう一度、お良の名を呼んだ。
「わたしの嫁になってはくれぬか」
思わずお節はお良の手を握りしめた。
お良はやっとの思いで「はい」と答えたかと思うと、お節の手を振り払って駆け出す。
お良は恥ずかしかった。
「お節ちゃんの前でプロポーズするなんて、源一郎様のばかばかばか」
もし二人だけだったらなら、源一郎様の胸に飛び込んだのに・・・・。
源一郎は薬問屋の店前に立った。しかし、どうにも足がすくんで前に進めない。
伊兵衛殿の顔が浮かぶ。
父も一目置く伊兵衛は、豊富な知識、明晰な頭脳、先を見通す洞察力、どれをとっても、そんじょそこらの侍の比ではなかった。
(あの罰ゲームの一件が伊兵衛殿の耳にでも入っていたら)
お良への想いが強くなればなるほど、源一郎の心に臆病風が吹いた。
思案に暮れる源一郎に神が救いの手を差し伸べる。
見れば、寺の片隅に座っているのはお良にお節。
好機到来。天の恵みか、神様の計らいか。意を決した源一郎は二人に近づく。
「お良さん」
その声に振り返った二人。
お良の顔が見る見る赤くなる。
黙って会釈を返すお良。
そのお良の顔をじっと見つめて棒立ちの源一郎。
初夏を思わせるような強い西日を受けて、二人のうなじに汗が滴る。
「お良さん」源一郎はもう一度、お良の名を呼んだ。
「わたしの嫁になってはくれぬか」
思わずお節はお良の手を握りしめた。
お良はやっとの思いで「はい」と答えたかと思うと、お節の手を振り払って駆け出す。
お良は恥ずかしかった。
「お節ちゃんの前でプロポーズするなんて、源一郎様のばかばかばか」
もし二人だけだったらなら、源一郎様の胸に飛び込んだのに・・・・。

