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お良の性春
第5章  波乱万丈 若後家 恋の旅立ち
 「そこでだ」

 仙太郎が二つの案を出した。
 一つはお良を養女にして婿を迎える案。もう一つは離縁して実家に帰る案。

 「忌憚のない意見を聞きたい」

 「仮に、お良が実家に帰ることになっても早川家にはお松がいます。お松に婿をもらえば跡継ぎに問題はありません」
 義久がさっそく離縁案に賛成する。

 「しかし、お良はしっかりもの。何とかこの家に残って婿を迎えてくれたら・・・」
 お栄が養女案に賛成する。

 「ここはお良の気持に任せたらどうですか。お良、そなたの気持は」とお梅がお良に声を掛けた。

 お良は両手を重ねて畳みにつき、深々と一礼した。

 「源一郎様と過ごしたこの家に、別のお方をお迎えすることはご勘弁ください」

 お良の声は震えていた。

 「そうか」

 大きく頷いた仙太郎の一言で話はついた。
 養女として家を継いでもらえれば、それに越したことはないと願っていた仙太郎夫婦も、源一郎を慕うお良の気持を考えれば、それが出来ぬ相談と諦めた。
 お良は両親とともにそのまま早川家の屋敷を後にしたのだった。
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