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熟女美紗  情交の遍歴
第6章 軋むベッド 情交の館 
 エレべーターの中で健は美紗の手をとって自分の右腕に絡ませた。
 美紗は健と腕を組んだまま街に出た。
 若いイケメンと腕を組んで歩くのは、やっぱり気分がいい。

 「さあ、美紗さん、今度はどこに案内してくれるんですか」

 健の声が一気に明るくなる。
 美紗は横断歩道を渡って公園の中を歩いた。

 「山下公園がここよ。ケンチャンの好きな潮の香がするでしょう」

 二人は岸壁に沿って横一列に並んだベンチの一つに座った。
 丘の上から遠くに見たカモメの群れが、目の前の柵にとまって羽を休めていた。
 一列に並んだカモメに向かって健がスマホを構えた。

 「いい写真が撮れましたよ」

 青い海を背に、カモメが柵の上に一列に並んで、いかにも港町らしい写真だ。

 「上手ね」

 誉められた健はもっといい被写体を探して公園の中をうろつきはじめた。
 美紗はようやく一人になれた。
 次々に予想外のことが起きる。吉沢夫妻がこれからどうなるか分からないが、二人の間でオロオロし、久美に隠れてこそこそする自分の姿を想像したくもない。
 「消える」と言ったのは、己のプライドが許さなかったからだ。

 もう一度そう思った。

 幸一さんとは別れる。また一人だ。
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