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第2章 　弄ばれる悦び　セフレ　充

　美紗には今までと変わらぬ日常が戻った。　
　「また一人か」
　美紗は再び孤独を感じた。

　（私との出会いが俊輔を大人にしたなら、俊輔との出会いは私に新しい世界を教えてくれた）

　家族の絆もなければ、夫婦の束縛もない。
　薬剤師としての収入もあり、蓄えもあるからお金に困ることもない。
　美紗は己の人生を自由に生きたいと思った。

　（あああ、もうそろそろ三五歳か・・・）

　これからの人生にどんな出会い、どんな運命が待っているのだろう。
　そのとき、なぜか充の顔が浮かんだ。
　あの日のお礼もしなければいけないし・・・・。
　美紗は翌月、初夏を迎えた大野山にまた登ることにした。

　初夏の大野山は燃え立つような緑の中にあった。
　頂上の広場で富士を眺めながら美紗は大きく深呼吸した。
　スカイツリーとほぼ同じ高さの山だ。
　山頂も下界とさほど気温の差はない。
　しかし、アスファルトに覆われた都会とは断然違った。