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熟女美紗  情交の遍歴
第3章  新たな出会いの予感
 「ご馳走様でした」

 吉沢と呼ばれた男はコーヒーを飲み干すと一言礼を言って、顔を帽子で覆い後ろの岩に寄りかかって寝た。
 美紗は弁当を片付けながら、ふと充のことを思い出していた。絵里の誘いがなかったら、きょうも充の腕に抱かれていたはずだった。


 「そこにリンドウが咲いていますね」

 美紗は吉沢の声に我に返ると、足下の草むらに目をやった。

 「本当だ。ちっとも気がつかなかったワ」

 二人の声に、絵里が振り返った。

 「あら、岸川さん見て見て、リンドウですって」


 「どちらに下山する予定ですか」

 岸川の問いに「神社口」と絵里が答えた。

 「私たちも同じです。ご一緒しましょう」

 岸川は嬉しそうだった。
 岸川が先頭に立ち、絵里、美紗、吉沢の順に並んで山を下った。

 「野草にお詳しそうですネ」

 後ろを歩く吉沢を振り返って、美紗が聞いた。
 学生時代薬学部だった美紗は、ゼミの仲間と薬草探しに山に登った経験があった。

 「リンドウって薬草なんですよね」

 美紗はちょっと知ったかぶりをしてみせた。

 「へーそうなんですか」

 岸川が振り返った。

 「美紗も私も薬剤師なの」

 「薬剤師」と聞いて吉沢の視線がチラッと二人の女性の顔に注がれた。

 「センブリ、ゲンノショウコ、ドクダミが日本の三代薬草ですよね」

 美紗が思い出した薬草の名を口にした。

 「登り道で見ましたよ。センブリ」

 吉沢がさも残念そうに答えた。

 「センブリって何ですか」

 岸川が話に首を突っ込む。
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