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フリマアプリの恋人
第7章 秋桜の秘密
「やめてください…!離して…!」
澄佳は片岡の手を振り解き、咄嗟に席を立った。
片岡に背を向け、怒りに唇を噛みしめる。
「何を言っているの…⁈
貴方には奥様がいるのに…!
また私を騙すの…⁈」

「離婚したんだ。麻季子とは」
背後から片岡の落ち着いた低い声が響いた。
思わず眼を見張り、振り返る。
「…え⁈」
目の前に片岡の静謐な…けれどどこか哀愁を帯びた表情があった。
「二年前だ。
…正確には、麻季子から離婚してくれと言われたんだ」
「…どうして…?」
片岡は精神を病んだ妻にずっと付き添い…寄り添っていたのではないのか?

「…麻季子はあれから段々と快方に向かってね。
三年前には無事に病院を退院したよ。
…それから一年間はずっと一緒に暮らした。
ごく普通の夫婦のように穏やかに…。
自分では上手くいっていたと思っていた。
…けれど…」
片岡の端正な貌が苦しげに歪んだ。
「二年前に突然言われたんだ。
…罪滅ぼしのように自分に寄り添う俺を見るのが辛いと…。
俺といるとずっと自分が責められている気持ちになると…。
だから別れてくれと言われたんだ。
…俺から離れて、一人でやり直したいと…」
「……」
片岡は窓の向こうに広がる穏やかに凪いだ海を見つめた。
「…麻季子はパリに行ったよ。
彼女は若い頃、帽子のデザインの勉強をしていてね。
結婚して諦めてしまったから、その勉強をまた一から始めてみたいそうだ。
…目をきらきらと輝かせて楽しそうに語っていた。
あんなに生き生きとした麻季子を見たのは初めてだったよ」
「…そう…」
片岡が思い切ったように告げる。
「…それから…麻季子が君に謝りたかったと言っていた。
酷いことをして、申し訳なかったと…。
直接謝る勇気がなくて済まないと…」
澄佳は溢れる涙を堪えながら首を振った。
「…そんな…私の方こそ…」
…片岡が妻帯者と分かっても別れられなかった。
別れたくなかったのだ。
自分の方が愛されていると自惚れていたのだ。
…酷いことをしたのは、私。
…傲慢だったのも、私。
片岡の妻の気持ちを考えたことすらなかった。
詫びられる資格などないのだ。

静かに涙を流す澄佳の手を、片岡が優しく引き寄せる。
「…だから…もう一度、やり直そう。
今なら俺たちはきっと上手くいく…」

…愛しているんだ、澄佳…。
片岡が昔のように、甘く囁いた。





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