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フリマアプリの恋人
第7章 秋桜の秘密
…「ヴィクトリア朝のイギリスでは多くの女性は型にはめられ、抑圧されて生きてきた。
上流階級の女性は尚のことそうだった。
彼女たちはあらゆることに制約を受け、厳しい決まりや慣習に雁字搦めにされ、自我を殺して生きることを余儀なくされていたのだ。
…そのため心理学者のジークムント・フロイトは抑圧された自我を解放させるために精神分析…特に夢分析を積極的に取り入れたのだ…」
柊司の低音の美声が階段教室に響き渡っていた。

突然教室に飛び込んだ澄佳に、講義を受けている学生たちの視線が一斉に集まった。
その気配に板書していた柊司が何気なく振り返り、眼を見張る。
「澄佳さん…!」

騒つく学生たちの中から、声が聞こえた。
「あれ?澄佳ちゃん?どうしたの?」
講義を受けていた瞳が眼を丸くして驚く。
澄佳は律儀に着席している学生たちに頭を下げる。
「すみません。
三分だけ、私に時間をください」

何ごとかと騒めく学生たちの中、瞳が
「ん〜、なんだか分かんないけどOK!」
両手で丸を作る。

教壇の上に立ち、信じられないように澄佳を見つめる柊司に近づいた。
深呼吸して柊司を見つめ返す。
「柊司さん。私と結婚してください」
学生たちがどよめく。
しかし澄佳はまるで目の前の柊司以外は視野に入らないかのように続けた。
「こんな非常識な私が柊司さんに相応しいか分かりません。
でも、これが私です。
貴方を愛しています。
誰よりも深く…。
私も、貴方の側で生きたい。
貴方の側で死にたい。
百年先も魂は貴方の側にありたい。
…それが私の真実です」

どよめきはいつのまにか静まり返っていた。
水を打ったかのような静寂の中、柊司が教壇から降りる。
そうして掬い上げるように澄佳を強く抱き竦めた。
震える熱い声が鼓膜に染み入る。
「愛しているよ。澄佳…!
結婚しよう…!」

瞳が歓声を上げ、立ち上がる。
「ちょっと!きよたん!あたしらフラッシュモブでもする⁈した方がいい⁈」

柊司が澄佳を抱き竦めたまま、瞳を見遣りにっこりと笑った。
「いや、いい。みんなちょっと目を瞑っていてくれ」

密やかな…甘い口づけが交わされる。
瞳がそれを祝福するように階段教室の上からレポート用紙を撒き散らす。

…白い紙片のそれはさながら天からの贈り物のように輝きながらひらひらと、キスをする二人の上に舞い降りたのだった。




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