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御主人様のお申し付け通りに
第13章 開かずの間
アパートは取り壊されて、しばらく平地状態。

私は堂々と永田の玄関先の入り口から、永田と共に出入りを繰り返していた。

「俺、今日ちょっと本社会議の用があるから、先に夕飯食べててよ」

朝の出掛けるタイミングも同じにして、永田は玄関の鍵を閉める。

「本社会議?…永田って平社員じゃないの?」

本社で会議って、何か役でも付いてなきゃ会議なんかに参加しないでしょ?

「俺は一応、課長職なんだけど」

……?!

「うっ!嘘でしょ!!」

私は思わず、びっくりして後退り。

「あれ、言わなかったっけ?」

「…知らなかった」

「まぁ、いいや、なるべく早く帰る」

永田と私はお互い自転車に股がり、別々の方向を向く。

「うん、じゃあ」

「おう、じゃあな」

永田、意外じゃんよ。

私は自転車こぎながら、ニヤける。

確かに、しっかりしてるからなアイツ。

責任のある役を任せても、涼しい顔してやりこなせそうな感じするな。

じゃあ、部下もたくさん居る訳だ。

……ヌハハ。

私はもしかして、とてもとてもラッキーなのか?

収入はいいだろうし。

いや、先ずは永田は確かに半端なく優しい。

しかも、顔がカッコいいイケメン。

容姿はモデルみたいに肩幅のある長身の痩せマッチョ。

さらにキスもセックスも…うますぎ!

神様ごめんなさい。

私みたいな、いい加減で世の中なめてる頭の悪い女に。

あんないい男と出逢ってしまう、あんないい男にベタボレされてしまう。

許してください。

でも、私はやっぱりそれでも、独身でいたいのです。

平々凡々の普通の主婦には、どうしてもなりたくないんです。

平々凡々の子持ちの主婦には、絶対になりたくないんです。

いくら永田が完璧でも、それだけは嫌なのです。
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