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御主人様のお申し付け通りに
第5章 勝手にしろ
その後、メールで連絡を取り合って、元旦那と今夜会うことになった。

1時間後に、車で迎えに来る。

私は永田に知られないように、こっそり家から出て、路駐する車の中に入り込む。

「お疲れ」

まだ、スーツのままの元旦那。

ネクタイをはずしながら、

「お待たせ、どこ食事に行く?」

「どこでもいいよ」

「よし、じゃあ食べ放題行こうか」

その言葉に思わず、

「やったー!」

永田とのキスの約束を忘れて、はしゃいでしまった。

イタリアンのお店。

ピザ、パスタ、サラダバーの食べ放題。

私は、ガムシャラに食べる。

1500円分のもとは取らなきゃと食べるまくる。

元旦那は、私の食べる姿をずっと見つめていた。

「おいしいか?」

「おいしい!」

頬杖を付いて、

「たくさん食べろよ、俺のおごりだからな」

「…すいませーん」

私は笑顔でピザを食べる。

元旦那が、自分の話したい事をなかなか言えないでいる状態なのが、なんとなく私は気が付いていた。

結局、その場では私の仕事の話ばかりしていた。

帰り道の途中で、元旦那は私にさらっと言った。

「会社に離婚した事が知られたからなのかなぁ、急に独身に戻った途端に転勤だよ」

転勤?

「誰が?どこに?」

「俺だよ。4月から東京勤務だよ」

「嘘っ?」

「本当に。だから、ごめんな。もうトシコと食事会はこの先できなくなっちゃった」

……。

急に親しい友人よりも深い関係の人間が、目の前から居なくなる寂しさが、一瞬よぎる。

「そうなんだ…」

どうしよう…寂しいや。

この先、誰に甘えたらいいんだろう。
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