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御主人様のお申し付け通りに
第5章 勝手にしろ
……ジャリ…ジャリ…ジャリ……

足音がして、何気に振り返ると永田が仁王立ちしていた。

ウゲッ!

とんだところを、見られているような気持ち。

「誰と電話してんだ?」

わざと聞こえるような大声で、イヤミったらしく言う。

「シッ、シッ!」

あっち行け!

「俺の敷地内で、携帯電話でくっちゃべったら近所迷惑で通報されるだろうが~」

なんだ、それ。

「ごめん、ちょっと後でかけ直す」

私は元旦那との着信を切って、永田を睨み付けてやった。

「うっとしいなぁ…」

「あぁ?なんだって?」

更に永田は、キツイ目をして睨み付ける。

「あんた、わざとやってるでしょ」

「わざとだけど、何か文句あるのか?」

ひ、開き直るか!?

「本気で嫌な性格!」

「おまえがな」

しかもすぐ言い返してくるから、私もすぐに言い返す。

「あんたがだっての!」

「おまえがだよ」

「あんたのが酷すぎるわ!」

「いやいや、おまえのがクレイジー?」

バカって普通に言えよ、バカ!

もう、いいや。

面倒臭いから、部屋戻ろっと。

「元旦那だろ、今の」

「それが何か?」

私は無視して、アパートの中へと入ろうとした。

「会いたいって?会うのか?」

まだ、発するか。

「会う気でいる」

「じゃあ、俺のキスは意味無かった訳だ」

「そ、そんな事は…」

無いとか言っても、会おうと思ってるから、その先の言葉は言えなかった。

「あんまなぁ、人の事をなめた扱いしてると、一気に痛い所へ落ちるぞ」

…ズキッ…

永田、私はそんなつもりは無かったんだよ。

でも、今の言葉で胸が痛くなった。

「勝手にしろ」

そう言って、あっさり永田は自宅へと帰って行った。

ムカつくんだけど、図星だから胸が痛むのかな。

なめた扱いって。

誰に対してなの?

元旦那に?

それとも永田に?
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