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白い指先と甘い吐息
第8章 翳りゆくとき
そのとき「貴史さん」となつみがつぶやいた。
飛び上るほど驚いた五十嵐は慌てて水着を元に戻し、医務室を出て行った。
なつみは夢を見ていた。
夢の中でなつみは、貴史の腕枕で抱き合って眠っていた。
寝ながらも貴史の唇はなつみのおでこに口づけをしている。
規則正しい寝息に包まれて幸せでたまらない。
「大好き」とささやいた瞬間、涙で目が醒めた。
もう一度、あの輝きの中へ戻りたかった。
誰もいない医務室でなつみは声をあげずに泣いた。