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歳下の悪魔
第2章  天使と悪魔


 和真が、早くパソコン作業を覚えればいいのに。
 そうなれば、デスクに座ったまま何時間も動けない。守だけで、食品分析は足りるだろう。
「優華先輩。このデータ、どうすればいいですか? 解析のやり方、教えてください」
「ごめんね。今日は忙しいから……。私のせいだけど」
「じゃあ、個人レッスンでも、してもらおうかなあ……」
 和真が小声で言う。
 私のせいと言ったのが、彼の癇に触れたらしい。
「それは……」
「じゃあ、忙しくない時に、お願いします。雑用やってますから」
 元気に明るく言うと、和真は課長の所へ行った。
 会社で、悪魔の顔をチラつかせるなんて。
 嫌なことを忘れるように頭を振ってから、私はパソコンに集中した。


 ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆


 鳴り響く目覚ましを止める。
 今日の朝は、スッキリと目覚められた。
 手首の跡は、まだ少し残っている。湿布と包帯を巻いてから、朝の支度を始めた。
 気分がいいのは、暫く和真が来なかったお蔭。今週は残業が多く、帰りが遅くなるせいもあっただろう。
 明日からは、土日の連休。それを支えに、今日1日頑張れる。
 いつもと同じ時間。ラッシュの電車に乗り込むと、すぐに違和感を覚えた。
 痴漢。
 フレアスカートを捲られ、太ももの辺りを撫でている。
 学生時代から10年以上もラッシュにもまれていれば、何度も痴漢に遭ってきた。無理矢理後ろを振り向こうとすると、「動くな」と言う和真の声。
 私は前を向き、固まった。
 彼は、私より会社に近いマンションのはず。痴漢目的で、同じ電車の同じ車両に乗ったとしか考えられない。
「ヤ……」
「声を出すな」
 私は、声が出ないように頑張った。
 太ももを触っていた手が、脚の間に入ってくる。電車ではバランスを取るために、少し脚を広げている。
 短い区間でドアが開くと、そのたび和真に腰を抱かれた。傍目から見れば、カップルだと思うだろう。そうやって通勤しているカップルも、実際にいる。
 下着の上から、股間をやんわりと撫でられた。我慢していたがそのうちにエスカレートしてきて、下着の中に手が入ってくる。
 前へ手を回し、触ってくるのはクリトリス。
「んっ……」
 ドアが開くたび何度も降りようとしたが、和真が許してくれない。


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