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歳下の悪魔
第4章  目論見(もくろみ)


 それなら別の子を見つけて、その子とセックスすればいいのに。
 私は泥酔していたんだから、いくらでもなかったことに出来る。処女でもなければ、もう若くもない。
「優華―。お昼行こー?」
 顔を上げると、横に美月が立っていた。
「手首、治って良かったねー」
 今日から包帯はなし。手首の跡は、完全に消えている。体にはまだ、異様な跡が残っているが。
 でもこの課は、着替えなくていいから安心だった。裸にならなければ、誰にも見られないで済む。
「あんまり、進んでないみたいだねー」
 美月は、嫌味で言ったわけじゃない。私は元々、仕事が早い方。それなのに、朝からの分がまだ横に残っている。
「話聞くからー。いつものパスタの店行こー?」
 その店は路地の奥にあり、昼でもそう行列にならない。
「うん……」
 そう答えて白衣を脱いで椅子に掛けたが、美月に出来る話はなかった。
 縛られたり、セックスを見せられて困っているなんて、誰にも話せない。
 壁の時計を見ると、まだ昼休みの三十分前。この課は比較的自由に休みが取れ、いつも弁当の太田が残ってくれる。それでも外部からの電話は、全くと言っていいほどない。二課に電話する必要はないからだろう。
 美月と店に着き、お互いに注文を済ませた。今日は早いから一番奥の席が取れ、美月が見つめてくる。
「悩みがあるんでしょ? 顔に出まくってるよー」
 そう訊かれて、つい俯き気味になってしまった。あると言っているようなものだ。
「元彼のことが……」
「違うでしょ? 話しづらいならいいけどー」
 美月に怒った様子はない。それよりも、心配してくれている表情。
「週末、合コン行こうよ。友達が、セッティングしてくれてるからー」
「美月は、彼氏がいるでしょう?」
「当日は、内緒でねー」
 私は、恋人が出来てからは合コンに参加していない。
「相手は、四菱(よつびし)商事のエリートだってー。いい人がいたら、乗り換えようかなぁー」
 結局美月に説得され、その合コンに出ることになってしまった。



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