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歳下の悪魔
第4章  目論見(もくろみ)


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 一時間だけの残業で帰れるなんて、久し振りかもしれない。
 その頃には、私も手持ちの仕事は終わっていた。
「お疲れ様でした!」
 和真の元気な声にみんな笑っているが、私は胸の奥が痛くなる。
 急いで帰る彼をよそに、私と美月、敦子はロッカールームへ行った。
「和真くん、元気でいいわねぇ。仕事も覚えてきたし」
 白衣を脱いだ敦子が笑う。
 会社での様子は全く違っても、私には悪魔の声にしか聞こえない。明るく元気な好青年の仮面を着けた、悪魔。
 マンションに帰りたくない。そう思っても、行く場所はなかった。それに私がいなかったら、来た和真は怒るかもしれない。もっと酷いことをされる可能性もある。
 もっと酷い内容は思いつかないが、彼なら何かあるかもしれない。
 3人で一緒にエレベーターを降り、いつものように美月は地下鉄へ。私は敦子と一緒に電車に乗るが、彼女は数駅で乗り換えてしまう。
 知り合いがいなくなると、途端に恐怖に包まれる。
 和真は、かなり先に帰ったはず。でももしかしたら、隠れて待ち伏せているかもしれない。そんなことまで考えてしまう。
 電車は朝のようなラッシュじゃなく、痴漢をすれば分かるくらいの乗客。
 安心だと自分に言い聞かせ、自宅へと向かった。


 家に着いて部屋着に着替え、途中のコンビニで買った弁当を食べる。
 いつ和真が来るかと思うと食は進まないが、無理にでも食べなくては体がもたない。元々痩せやすい体質だから、出来るだけ食べなければ。
 以前は、自炊をしていた。でも今はそんな元気もなく、途中にコンビニがあって良かったと思う。
 外で何か音がするたび、ビクリとする。
 怯えても、この部屋にいる限り和真からは逃げられないと分かっているのに。点けていたテレビにも集中出来ず、リモコンで消した。
 気が付くと、もう22時。
 その気なら、いつもはもう来ている時間。それに今日は、会社で何も言われなかった。
 私は少し安心して、シャワーを浴びることにする。どうせ勝手に入って来るんだから、出迎える必要もない。
 シャワーを浴びる為に服を脱ぐと、腰の辺りの跡はまだ目立つ。でも、こんな所を人に見られることはない。


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