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虜 ~秘密の執事~
第2章
「椿様…………」
自我を手放しそうになる椿を、榊は上から覆いかぶさりぎゅうとその胸の中に抱きしめる。
シャツだけになった榊の胸元がはだけていて、逞しい胸が覗いていた。
それだけで椿はくらりとする。
(駄目……そんな風に抱きしめられたら、私を好きになってくれたのかと勘違いしてしまいそうになる……)
椿はそう夢うつつの中で呟き、睡魔にあらがえず夢の世界へ旅立ってしまった。
不思議だ。
榊に抱かれた、ただそれだけで自分の身体が愛おしくて、かけがえのないものに感じられる。
翌朝、椿はバスルームの大きな鏡に映った自分の裸体を、目を細めて見つめていた。
きっと榊は意識して付けたのではないだろうが、人よりも肌の弱い椿の薄い皮膚には所々に花が散ったように欲情の後が残されている。
ぎゅうと自分の体を抱きしめた椿は、赤い唇でそっと呟いた。
「榊……好き……」
(大好き……)
コンコンとノックされ、榊が声だけで様子を伺ってくる。
小さな頃から裸なんて見られ続け、昨夜あんなに自分の全てをさらけ出した相手なのに、椿は急に恥ずかしくなって慌ててワンピースを身につけた。
「おはようございます、お嬢様」
バスルームから出てきた椿に、榊はいつもと変わらず腰を折って挨拶する。
「お、おはよう榊」
榊はどもった椿を気にする様子もなく、手袋に包まれた長い指で曲がっている椿の胸のリボンをくくり直す。
「……大丈夫ですか?」
頭上から降ってきた榊の言葉に、椿は首を傾げる。
「昨夜……無理をさせてしまったのではと……」
(昨夜……)
昨日の艶めかしい情事を思い出し、真っ赤になった椿はぷるぷると首を振る。
それに合わせて椿の黒髪もさらさらと揺れる。
「そうですか。では今日も勉学に励んでください」
榊はそうそっけなく言うと、椿のリボンから手を離した。
(あれ……?)
椿は何か違和感を感じる。
まじまじと榊を見つめたが、その違和感は分からない。
(気のせいか……)
椿は赤くほてった頬に両手を当て、榊の後に続いた。