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幸せの頂点
第10章 卑怯



女の子達の話を聞いてると身勝手に克を捨てようとしてる私は大悪人な気分になる。

ずっと部長の姿が見えないままだからと私の心が迷い出す。

私は克を捨ててはいけないのかもしれないと…。

すれ違いの生活でも克は私の為に我慢してくれる。

克は私を裏切らない。

私は…。

神威を愛してる…。

その気持ちだけは否定出来ない。

克よりも誰よりも神威を愛してる。

そんな裏切りの気持ちのまま、やはりこのまま克とは居られないと感じてしまう。


「紫乃…、今週の休みは?」


家に帰れば克が不思議そうに聞いて来る。


「今週は…、休めないの…。」


嘘をつく。

罪悪感も薄れて来た。

大型連休が近いから…。

休めないと答えても克は疑いもせずに納得する。


「そっか…、連休は絶対に仕事だよね?」

「うん…。」


克とは、いつものすれ違いなのだと強調する。

克から私を捨ててくれれば…。

打算的な考えまでしてしまう。

本当にズルい女だ。

何もかもが息苦しい。

克と居る私は本当の私の姿じゃない。

克を裏切り、その背徳感や罪悪感すら神威への愛で薄らいでしまう。

仕事に集中する事すら出来てない。

売り上げの現状維持ばかりで、やり甲斐のある仕事の域にすら達してない。

今は克が重い枷にしか感じない。

あれほど好きだった克が…。

邪魔なんだとまで感じる。


「ねえ、紫乃…。」


私の首筋に優しく触れて来る克の手すらおぞましいとか考える。


「お風呂に入って来る。」


克の手を避けて逃げる。

嘘に嘘を重ねるうちに感覚が麻痺する。


「明日から出張なの…。」


休暇の前日に私は克にそう言った。

嘘でも克の家から逃げ出せる。

罪悪感すら失くした私はずっと描いてた幸せな夢から逃げる道を選んでた。


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