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幸せの頂点
第11章 物欲

リビングの窓辺に立ち街を見る。
今、貴方はどこに居るの?
ため息を吐けばガラスが白く鈍る。
「来てたか…。」
野太い声に身体が強張る。
振り向いて、すぐに彼を見たいのに固まった身体は言う事を聞いてくれない。
「今日は…、部長は仕事なの?」
窓の外を見ながら確認する。
「そうだ。」
その言葉にがっかりした瞬間に私の腰が彼の太い腕に抱き締められる。
「仕事でしょ?」
「厳密に言うなら、俺に休みは存在しない。」
「何それ…。」
いつものとぼけた話に口を尖らせる。
「拗ねてんの?」
とぼける男が私の頬で囁く。
「休みがないって意味を説明して…。」
わざと部長のキスから逃げる。
「紫乃は怖い女だな。会社とはそういう契約をしてんだよ。休みは俺が取りたい時に取る。店に縛られるのはお断りって条件な。」
クスクスと笑いながら再び私の頬に部長の唇が触れて来る。
「店に縛られるって…。」
「店は紫乃達バイヤーが見てくれてる。俺は動けない紫乃達の変わりに情報の確認に行く。今朝は金子が担当する売り場に入った新しいスパークリングワインを取りに行ってた。」
土曜日から売り出される新製品。
部長の後押しを受けて金子さんが契約を取ったスパークリングワイン…。
早めの入荷で夕べ届いた商品だ。
イタリア産で日本に僅か5000本だけ入った商品。
その2000本を金子さんが独占した。
「凄い…。」
そう言わざるを得ない。
「金子の存在は輸入業者の間で有名だからな。」
だから部長がどこの輸入業者にその商品が入るかを突き止めれば金子さんは、そこへ商談に行くだけの立場になれる。

