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幸せの頂点
第11章 物欲
人は強欲なのだと彼から教わった。
恋人を裏切り、卑怯だと自分を蔑んでも手に入れたいと思う恋がある。
私はそんな恋を手に入れる事が出来るのだろうか?
それは本当に幸せの頂点になり得るのだろうか?
不安を拭い部長の背中を追って彼の部屋へ帰る。
「んふふ…、止めて…、邪魔になってる。」
部長の部屋の台所に立つ私の腰を背中から抱く彼が私のうなじにキスを何度も落とす。
「それは…?」
「鯛の昆布締め…。」
「そんな料理が出来るのか?」
「母がよく作ってくれたの…、普通のお刺身だとお酒の肴に物足りないって言われるけど、こうすればお酒に合うって教わったわ。」
短冊のお刺身を薄造りにして、日本酒で拭き取り湿らせた昆布に挟み込む。
ラップで密閉して冷蔵庫で4時間も冷やせば丁度食べ頃になるというお手軽料理。
「お義母さんは料理人か?」
「違うわ。」
母は間違いなく主婦だった。
毎日のように料理番組や料理本を見る事に貪欲な人だった記憶がある。
好きな人の為だけに必死に料理をしてた母。
なのに何故、離婚をしたのだろう?
料理を済ませて手を洗い、ぼんやりと考える私にまたキスの雨が降る。
「俺の事以外は考えるな。」
拗ねた声…。
「母の事よ…。」
笑っちゃう。
「それでも俺以外の事だ。」
強引に私を振り向かせて私の唇に唇を重ねる。
もう充分なくらい貴方の事しか考えられない。
キッチンの調理台にお尻が押し付けられる。
私の舌を奪い取るほどの激しいキス…。
頭が熱くなる。
彼の愛撫を期待する身体が火照り出す。
「んんっ…。」
唾液が混ざり合いヌチャヌチャと音を奏でる。
私は貴方の首に腕を回してしがみつく。
私を離さないで…。
彼の腕の中だけが今の私にとって唯一、安心して幸せを感じられる場所だった。