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幸せの頂点
第13章 安泰
売り場に居た。
連休の前に棚を出来るだけ整理する。
売り上げ的な問題がないにせよ商品不足はまだまだ否定が出来ないという状況だ。
だから部長との出張には期待しちゃう。
女としてもだけど仕事としても部長は私が欲しがる物を完璧にチョイスしてくれる。
特設時代の商品では広い本店の売り場には物足りないとため息が出る。
「阿久津さんっ!」
高崎さんの声がする。
「はい?」
と振り返れば高崎さんに腕を捕まれる。
「高崎さん!?」
「逃げた方がいい…。」
そう言った高崎さんが青ざめた顔で私をバックヤードへと連行する。
「逃げるって!?」
「シッ!」
高崎さんが人差し指を自分の唇に当てた。
何事だと思った。
「涼香(すずか)お嬢様の大名行列が始まる。」
声を潜めて高崎さんが言う。
「涼香お嬢様?」
「社長の1人娘。今は大学の4年だけど就職先が当然のように本店だから自分に相応しい売り場を練り歩いては検討中なんだよ。」
「はぁ!?」
「気に入った売り場でフロアマネージャーをやる予定まではもう決まってるんだ。」
「ご冗談ですよね!?」
叫ぶ私を泣きそうな顔で見る高崎さんの目からは冗談じゃないのだという意思が伝わって来る。
フロアマネージャー?
キャリア5年以上は必要な役職を1人娘だからとポンッと与える親バカ社長に呆れてしまう。
店舗とバックヤードを繋ぐ扉の窓を高崎さんと2人で覗く。
「来た来た。あれが涼香お嬢様…。」
店内を闊歩する異様な集団を高崎さんが指差して教えてくれる。
なるほど…。
あれは逃げるべきだと思う。