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幸せの頂点
第15章 破局
「仕事が生き甲斐?男にちやほやされたかっただけじゃないのか?」
ここまで険悪になった以上は私が謝罪した程度でやり直せるとは思えない。
「後悔するってわかってるよね?」
スルーを繰り返す私にまだ謝罪の言葉を求めて来る。
「わかってるわ。既に後悔してるもの。だけど克とはやっていけないって悟ったの。だから、これ以上は私を幻滅させないで…。」
「幻滅したのは僕の方だ。」
「だったら黙って私を行かせて…。」
「勝手にしろ。」
やっと克も諦めた。
もう夜の10時…。
身の回りの荷物だけを持って家を出た。
タクシーに乗って実家の父に連絡する。
『紫乃か?』
「お父さん?しばらく、そっちに帰ってもいい?」
『何かあったのか?』
「詳しくは明日にでも話すから…。」
『紫乃の部屋はそのままだよ。』
父の言葉に涙が出た。
母のものはもうないが私の場所はあると言う。
泣きながら実家に帰れば父は黙って私を受け入れる。
「飯は?」
まだだと首を横に振れば父がお茶漬けくらいならと私の為の食事を用意してくれる。
「明日も仕事なの…。」
私の言葉に父が目を丸くする。
「連休じゃないのか?」
「百貨店に連休はないよ。」
「なら、早く寝なさい。」
本当はいきなり帰って来た娘に事情を聞きたくて堪らない父なのに私が疲れ切ってると判断して優しくしてくれる。
母は何故、この優しい父を捨てたのだろう?
私が克に感じたように父の優しさは母にとっては偽りでしかなかったのだろうか?
私がお茶漬けを無事に食べ終えた姿に納得だけした父は先に寝ると寝室に立ち去った。
残された私は1人で泣く。
終わらせた恋が虚しい夢だったと理解するには余りにも遅すぎたという後悔の涙が止まらなかった。