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幸せの頂点
第15章 破局

そんな克には罪悪感はない。
予定で熱海では男女別々の部屋になるとわかってたから…。
ここ最近の私は克の話を聞こうとすらしなかった。
私だけが罪悪感を持たされる話し合い。
「出て行くわ。」
そう言わざるを得ない状況に克は私を追い込む。
「紫乃?それがどういう意味かわかってるの?」
私次第ではチャンスがあるような言われ方に腹立たしさしか感じない。
私が悪いのだから、克に謝って克好みの大人しい女を一生演じろと言われてる。
私程度の女は身分相応な偽りの幸せで我慢すべきだと恩を着せられてる。
耐えられない。
何もかもから逃げ出したい。
「しばらく1人になりたいの、だからこの部屋を出て行くわ。」
「一緒に居た上司とやらの為じゃないの?」
私の態度が気に入らない克の反撃が始まった。
「克と距離を置く事と部長は関係ないわ。」
部長には好きな人が居る。
社長のお嬢様と結婚する。
だって彼はあの佐丸の息子。
私なんかは遊びの女。
充分に傷付いた私の心を克は更に抉って来る。
「あの上司との出張だと言っては鼻歌を歌って出て行く紫乃に僕が気付いてないと思ってた?」
「だから部長は関係ないって言ってるでしょ?」
「そんな女だとは思わなかったよ。」
吐き捨てるように克が言う。
なら、どんな女だと思ってたの?
克のお義母様に歓迎されてなくとも知らん顔で克と結婚する図々しい女?
何でも克の為に我慢する地味な女?
どれも本当の私じゃない。
「とにかく出て行くから。」
「何処に?」
「しばらくは実家に帰るわ。」
荷物をまとめて実家に帰る段取りをする。
その間も克の嫌味は収まらない。

