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幸せの頂点
第16章 決意
「紫乃、とにかく話をしよう。」
部長までもが克と同じような事を言う。
「何も話す事はありません。」
「頼むから…。」
部長が再び私の腕を握り額に額を当てて来る。
「止めて下さい。」
「駐車場で待ってる。今日は一緒に帰るぞ。」
「お断りします。」
「紫乃…。」
「部長は梨花さんの事だけを考えればいいでしょ?私の事なんか、もう…。」
放っておいて…。
そう叫ぶ前に唇が部長の唇で塞がった。
狡い人…。
無理矢理にでも私を縛り付けようとする。
部長を突き放そうともがいても部長の力に勝てるはずもなく部長は私を溶かすキスをする。
部長の舌が口の中に捩じ込まれる。
レイプを受けてるようなキス。
強張った身体が次第に緩み部長の成すがままにされてしまう。
息すら出来ずに頭が熱くなる。
身体はまだ部長を愛してると部長を求めて疼き出す。
もう止めて…。
叫ぶ事すら許してはくれない人…。
いつだって強引で偉そうな俺様。
私はまだ部長に愛されてると勘違いさせるキスが続き私の中で築いた壁を意図も容易く破壊する。
ゆっくりと部長の唇が私から離れる。
「帰って来いよ。」
唸るように部長が言う。
帰る?
何処に?
私が帰れる場所なんかない。
克とは違い部長とは始めっから、そんな関係を築いてはいない。
「もう…、放っておいて…。」
涙を流して懇願する。
部長のところに私の居場所なんか存在しない。
「待っててやるから…。」
涙を流す私の頭をくしゃくしゃと撫でてから部長が私に背を向ける。
その背中について行きたいと思う。
それは私が惨めになるだけの道…。
私が欲しいのは母のような小さな幸せだけだ。
立ち竦む私を残して立ち去った部長が退職したのはそれから2週間後の事だった。