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幸せの頂点
第17章 場所
後はよく覚えてない。
ただ自分が帰るべき場所に帰って来たのだという安堵感に包まれる。
部長に抱かれたまま意識を失ってた。
そこが私の居るべき場所だからと気持ちがようやく安らぎを感じて眠る。
夕方に目が覚めるとベッドには私だけ…。
いつものように部長のYシャツを拝借してリビングに向かえば缶ビールを片手に持つ部長がキッチンで夕食の用意を始めてる。
「起きたか?」
「うん…、シャワーして来る。」
キッチンに居る部長を残してシャワーを浴びる為にお風呂場へと向かった。
部長とは話し合う事がたくさん有り過ぎてどこから話せば良いのかと考える。
シャワーを済ませてリビングに戻れば部長が私の為に用意した夕食を並べてる。
「泊まっていくよな?」
そう確認をされても私は俯く事になる。
「ごめんなさい、明日も仕事だから帰る。」
私の言葉に部長が目を見開いた。
「まだ、なんかあるのか?」
「違うよ。間違いなく神威を愛してる。それは絶対に嘘じゃない。」
「なら、なんなんだ?」
「急ぎたくないの。」
「何を?」
「未来を…。」
部長なら私を幸せにしてくれる。
それがわかってても私自身の努力も必要だと思う。
人から与えられるだけの幸せは本当の幸せだとは思えない。
母が父に与えられた幸せに満足出来なかったように私も克が与えるだけの幸せに満足出来なかった。
「休暇の日は来てもいい?」
私の確認に部長が微妙な顔をする。
「好きな時に来ればいい。その為に鍵を渡したつもりだからな。」
「ありがとう。」
部長の顔に手で触れれば、その手を握る部長が私の指の関節にキスをする。
私の帰る場所…。
私が幸せになれる場所…。
やっと見つけた小さな恋心だからこそ大切に育てたいと願うだけだった。