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幸せの頂点
第21章 本来
ひと月後…。
「あの人は?」
ビクビクとしながら小声で部長に聞く。
「ホテル茅野のオーナー夫人。茅野ブライダルの責任者でこの結婚式の仕切りも夫人がやってる。引き出物のカタログはうちの百貨店のカタログを全面に出してくれてる人だから覚えておけ。」
低く唸るように部長が言う。
覚える事が多すぎて私の頭はもうパンク寸前だ。
結局のところ私が務めた百貨店は佐丸に吸収合併されてしまう事が決定した。
それに伴い部長が佐丸の人間として全ての統括バイヤーの部長を務める事となる。
今や百貨店の社長は支社長という立場に成り下がり部長の方が社長よりも偉いという。
「役職は部長なのに?」
「本社と支社の違いだからな。それに…。」
「それに?」
「紫乃が部長、部長と呼ぶから親父が面白がって部長しかやらせないとか言いやがる。」
部長が強面で私を睨む。
未だに部長なのは私のせいだと言いたいらしい。
「そこは部長の実力不足だとお義父様が暗に言ってるんじゃないの?」
「うるせ、俺の役職を言う前にお前はさっさと自分の仕事を覚えてしまえ。」
虎がグルルと唸れば私はビクンと身体を強ばらせる事になる。
「そんな事…、言われても…。」
ゴニョゴニョと言い訳する。
部長の佐丸移動に伴い結局は私も佐丸移動を上から命じられた。
今まで通りに業種はバイヤーではあるがバイヤーはバイヤーでも部長の手足として佐丸の全商品に対応するバイヤーを務める事となる。
なのに今のところはバイヤーというよりも部長の秘書のような仕事しか出来てない。
そんな私が今日は会長命令で『Beau』の社長の結婚披露宴に部長と共に参加する。
来客5000人…。
その中で佐丸の会長が様々な人々と挨拶を交わす度に私は部長にその相手が何者かの確認をするだけで精一杯という有り様。