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幸せの頂点
第21章 本来
「覚え切れない…。」
そうボヤく。
京都藤原の本店の大広間で行われた披露宴。
形式は立食パーティースタイル。
雛壇に並ぶ花婿と花嫁が豆粒くらいにしか見えないという場所を陣取りながらも既に100人近い人と会長は挨拶を交わしてる。
「お義父様…、顔の広さが半端ない。」
せっかくの藤原から出された料理を食べる事すらせずにこの3時間は挨拶し続ける会長を尊敬する。
「この前の佐丸の創立祭では会長のくせに全てを叔父任せで、ろくに挨拶もしなかったからな。それでも今日は比較的に少ない方だぞ。藤原の代表なんか来客5000人全ての人間に挨拶を交わしてる。あんな事は俺には無理だな。」
部長が呆れたように言う。
藤原の代表…。
年齢不詳で女性のように綺麗で柔らかな笑顔をする男の人だった。
藤原の代表の挨拶は一言二言程度の会話だけだったけども私のようなオマケで来た人間にまで深々と頭を下げて挨拶をする几帳面な一面を見た。
会長は今のところは百貨店に纏わる関係者と顧客の人だけを見つけては挨拶をして回ってる。
それが佐丸の代表という立場を背負う人…。
いずれは部長がその立場になる人だと思うと私には荷が重い。
「そこは微妙なところだな。」
部長が苦笑いをする。
「なんで?」
「元々、佐丸の代表は女だって言えばわかるか?」
わからない…。
てか代表が女性って事は…。
「本来の跡取りはお姉さん!?」
「正解…。」
部長がニヤリとする。
だから佐伯家ではお姉さんに誰も逆らわない。
本来の順番でいうならばお姉さんに万が一の時は梨花さんが代表になると部長が言う。