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幸せの頂点
第22章 頂点



今日は佐丸の55年目の創立祭…。

青空が広がる藤原の立派な日本庭園の中でパンッと手を叩くような音が響く。


「うわぁーん…。」


派手な声で男の子が泣く。

その男の子に向かって牙を剥き睨みつける小さな女の子に悲鳴を上げる。


「香耶(かぐや)っ!?」


我が娘ながらなかなかの美人に産まれてくれたとは思うけど問題はその気の強さが恐ろしい。


「やだ…、昴(すばる)。どうしたの?」


落ち着いた薄紫色の着物を着た貴婦人が泣きじゃくる男の子を抱き上げる。


「ヒック…、香耶ちゃんが…、ヒック…。」


男の子は必死に私の娘の香耶に引張叩かれたと母親に訴える。

当然、私は香耶の母親として


「香耶っ!昴君に謝りなさいっ!」


と叫ぶ羽目になる。

僅か4歳と言えども彼はあの『藤原』の跡取りだ。

いずれは『Beau』も継ぐだろう。

その昴君は曽我夫人である梓さんに抱っこされたままひたすら泣きじゃくる。

遠縁とはいえ百貨店『佐丸』の絶対的取り引き相手の息子をよりによって創立祭の最中に佐丸の孫娘が殴るとか有り得ない。


「やだ…。」


私の怒りに対して娘は毅然としてそっぽを向く。

この傍若無人振りを発揮する能力はまさに佐丸の跡取り娘だと感心をしたくもあるけれど…。


「香耶っ!」

「昴が悪いの!」


父親譲りの俺様香耶は自分の意思を曲げない子だ。


「昴…、香耶ちゃんに何をしたの?」


泣きじゃくる昴君を宥めながら梓さんが確認する。

この騒ぎにお客様への挨拶回りをしていた私の夫と梓さんの夫が駆け寄って来る。


「何の騒ぎだよ?」


今日、一番イラついてる神威が私を責めるように聞いて来る。


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