この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
幸せの頂点
第22章 頂点
私だけを真っ直ぐに見る。
それは出会った頃と変わらない穏やかな笑顔。
「なあ、紫乃。」
「はい。」
「俺が会長に就任したら紫乃はまた色々と忙しくて大変だとは思う。」
神威が私の頬を撫でる。
部長になった時も大変だった。
社長に就任した時はもう香耶が産まれてたからもっと大変だった気がする。
そして会長へ…。
きっと毎日が忙しくて大変には違いない。
それでも毎日があっという間で私は満足出来る日々ばかりだったと思う。
「そんなの平気よ。」
私の言葉に神威がニヤリと笑う。
「紫乃は幸せか?」
時々、神威はそれを聞いて来る。
私が欲しかったのは幸せだから…。
「うん…。」
笑顔で神威の質問に答える。
これが私の幸せの頂点だとは思わない。
きっと、この先にはまだもっと私が幸せになれる日々が来ると私は信じてる。
その頂点に向かって神威と共に歩く。
幸せの頂点は求めて手に入れるものじゃない。
だから私は何も失わない。
寧ろ香耶というしっかり者の娘を手に入れた。
神威と共に…。
その不器用で無骨な手を握る。
神威がゆっくりと私に顔を近付ける。
唇が私の唇に微かに触れる。
「だからっ!会長の挨拶が始まるでしょ!?そんな事してる場合じゃないってば…。」
「ちょっとくらい遅れても大丈夫だろ?」
とぼけた神威はニヤニヤとして私のお尻を撫で回す。
「駄目に決まってる。」
「紫乃の着物姿って妙に唆る。」
「早く挨拶に行ってっ!」
結局、神威の頬を軽く引張叩く。
香耶はそんな両親に呆れた顔をして欠伸をする。
「しゃあねえな…。」
嫌々ながらでも香耶を抱えた神威が私に背を向けて歩き出す。
ただ真っ直ぐに幸せの頂点へと向かって…。
私はその背を追いかける。
彼から逸れない限り、私の道に迷いはない。
彼と共に私も真っ直ぐに歩き出す。
まだ見ぬ幸せの頂点に向かって…。
fine…