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幸せの頂点
第3章 失敗
次の瞬間には私の口が開いてた。
いや…。
開かされたというべきだ。
荒々しく唇を喰まれ、部長の舌が私の口の中へと侵入するのを許してた。
克じゃない。
私は克を愛してる。
なのに克の顔が思い出せない。
私の腰をしっかりと抱き寄せて部長が私に深いキスを繰り返す。
こんな事はあってはいけない。
これは克に対する裏切りだ。
頭のどこかでわかってるのに私は部長の太い腕にしがみつきながら部長のキスを受け入れる。
息が出来ずに苦しいのに身体中の力が抜けていく。
初めてのキスに翻弄される女のように必死に部長のキスを受け入れる。
舌が絡み合うというよりもキスの下手な女の舌をくすぐるように男の舌が蠢いてる。
頭の中が真っ白で何も考える事が出来ない。
キスだけで全身が熱を帯びる。
力が入らずに崩れそうな私の身体を逞しい腕がしっかりと抱き締めて支えてる。
「んはぁ…。」
ゆっくりとキスが離れて息を吸う。
部長が私の顎を軽く持ち上げ、その親指の先が私の濡れた唇を拭う。
「嫌なら今のうちに言え…。」
低く呻くような声がする。
頭がぼんやりとして意味がわからない。
嫌なら?
私には克が居る。
だから嫌なら部長を拒まなければならない。
必死にその事を考えるのに考えが纏まらずに部長の腕にしがみつく。
「やっぱ嘘…、訂正する。今から嫌でもお前を抱く。」
耳元でそう囁かれた。
私を?
部長が?
身体が全く動かない。
再び部長の唇が私の唇に重なった。
深いキスに堕ちていく。
男に抱かれる。
野生的で荒々しい、まさに男と感じる人の前では私はただの女になる。
何も出来ず、男が思うがままの女に変えられる自分が嫌いだとは思えなかった。