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幸せの頂点
第6章 部屋
「何で不機嫌なんだよ。」
部長の声が耳元でする。
止めて下さい…。
その一言が言えずに俯く。
タクシーの中で部長が私の肩を引き寄せて抱き締めるから動けない。
私は帰るつもりだった。
なのに…。
「送ってやる。」
そう言った部長はいきなり私の腕を掴んで拾ったタクシーに乗り込んだ。
そこからは運転手に行き先を告げた部長が私の身体を引き寄せて離そうとしてくれない。
運転手の人から見れば私と部長は酔っ払ってイチャつく普通の恋人同士に見えるだろう。
帰ります。
そう言って部長に恥をかかせてやりたいと思うのに部長の舌が私の耳をくすぐり私は俯くだけになる。
「着きましたよ。」
イチャつくカップルにさっさと降りろという態度を見せる運転手の言葉に部長が支払いをしてタクシーを降りてしまう。
慌てて部長を追いかけて車を降りれば目の前にはとんでもないタワーマンションが見える。
「ここは?」
知らない街…。
都心の1等地…。
確か、億はするとか言われて騒がれたタワーマンションだとだけはわかる。
「俺ん家…。」
とぼけた声がする。
「なら、お疲れ様でした。帰ります。」
送ってやると言った部長を私が送った気分になる。
もう一度、大通りに出てタクシーを拾う事を考える私の腕を掴んで部長がマンションに入っていく。
「部長っ!」
「帰すわけねえだろ?」
「帰りますよ。」
「男が待ってる家にか?」
「そうですよ。」
有り得ないほどの険しい顔に変化した部長が私を睨みつける。
ビクリと身体が強張った。
「話し合うぞ。」
部長がそう言ってから私を無理矢理にエレベーターに乗せていた。