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幸せの頂点
第7章 軽蔑



「受け取らないなら帰さねえよ?」


また、とぼけた言い方をする。

部長なんか大っ嫌い!

そう思わないとやってられない。

部長の顔を見たら帰れなくなる自分が怖い。

俯いたまま部長の家を出た。

クタクタの身体を引きずるようにしてタクシーを探してた。

かろうじてタクシーを拾い克が待つ家に着けばもう2時を過ぎてる。

再びシャワーを浴びて部長と居た痕跡を消す。

カードキーは財布にしまい、克が眠るベッドにそっと滑り込む。

克の寝顔を見る。

久しぶりな気がする。

すれ違いになる生活は当たり前だから…。

克の寝顔をまじまじと眺めたのは一緒に暮らした始めの頃だけだ。

幸せだった。

克を手に入れた満足感に浸ってた自分を思い出す。

学生時代、同じ大学の同じテニスサークルだった。

皆んなで将来の夢を見た。

仕事はどんな仕事を選ぶ?

幾つまでに結婚したい?

子供は何人?


『幸せだと思えるなら、何でもいいよ。』


照れた顔をして、そう言った克に惹かれた。

他の女の子達が克にアタックしたのも知ってる。

なのに克は私を選んでくれた。

就職してからはすれ違いを経験した。

克とは無理かもしれないと自信を失くした事もある。

そんな私の手を握る克が


『一緒に暮らさないか?すれ違っても紫乃を感じられる時間が欲しいから。』


と言ってくれた。

あれから1年…。

プロポーズまでしてくれたのに…。

誠実な優しさだけで私を支えてくれた克を私は裏切り続けてる。

罪悪感を感じて克の寝顔から顔を背けてしまう。


ごめんなさい…。


克に言い訳が出来ない。

どう克に話をすべきかもわからない。


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