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スキンのアンニュイから作品を作ってみませんか?
第9章 匿名希望【ビター・トラップ】
それでも。ごくりと呑み込んだ唾がなかなか喉を通っていかない。煌々とした明かりを前に、私の足はすくんだように動かなくなる。

「ほら」
「ひゃっ……!」

 無理やり前に押し出されて先端に走った冷たい感触に、身体が縮み上がった。同時に背後から回された腕が肩をがっちりと抱き、私の身体は彼が目論むとおり、胸だけを窓に押し付けられる。
 ここまで近づいてもテレビの音は聞こえない。でも、向こうは違う。物音ひとつたてただけで、このレースのカーテンは引かれてしまうかもしれないのだ。

「そのまま、ね」

 鼓膜に命令をねじ込んで、彼はショーツの中に長い指を滑らせた。

「――ん……っ」

 待ちわびていた愛撫にこぼれそうになった声を、歯を食いしばって耐えた。そんなことお構いなしに、硬く隆起した蕾に添えられた指先が潤沢なぬめりを絡めとり、なめらかに撫でていく。
 水たまりを弄ぶような緩慢な触れ方だった。時折肉襞の方まで分け入り、くすぐっていっては戻りを繰り返す。そのうち焦れったさすら感じはじめ、後ろをそっと窺ってしまった。
 そうすると彼は目を薄く細めて二本の指の間に花芯を捉え、何度も執拗に往復させた。
 昂ぶっていくのを抑えられなくなる。

「っ、ふっ、あぁっ……」
「声」
「んんっ――」
「出すなって」

 はっとして唇を噛み締め、彼の腕を抱えるように自分の口を両手でふさぐ。と、耳元でくくっと意地悪い笑い声がして、色気だった囁きが続いた。

「……本当にカーテン開いたらどうしようか」

 わかってるから、言わないで。こんな状況なのにこんな状態になっていることなんて、いやってほどわかってる。

「いやらしいことしてるのも、いやらしい顔も、ぜーんぶ見られちゃうね」

 そんな『もしも』すら快感の材料になっていることだって、きっと彼もお見通しだ。
 煽られた羞恥心に余計に内奥が疼き、今度はそっちにもなにかが欲しくなる。そのもどかしさに、喉がひりつくような熱さをおぼえた。
 声を出してしまいたい。もっとぐちゃぐちゃに擦ってほしい。中に指を挿れてかき回してほしい。
 切望するように脚ががくがくと震えだす。

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