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第10章 明堂 陽菜様 【満月】



「しようよ……」
 沙也加が会社から戻ったマンション。
 ドアの前で待っていた少年が言う。
 細身だが、筋肉はしっかりと付いている。
 漆黒の長い前髪が彫りの深い顔にかかり、その奥に覗く中性的な顔立ち。
 目尻の上がった綺麗で大きな瞳が、夜空に浮かぶ満月に映える。
 幻想的な風景の中、彼は沙也加(さやか)を見つめていた。
 青年が月に一度、マンションに来るのは、25歳になった沙也加が一人暮らしを始めた半年前から。
 名前も誰かも知らないのに、訪ねて来た彼は毎回沙也加を抱く。
 沙也加は見持ちが固い方だったのに、何故か彼を受け入れている。
「はぁっ……」
 レースのカーテンから差し込む月明りが、沙也加のしなやかな裸体を照らす。
 彼の舌と手が乳房を愛撫し、唇は赤黒い跡を残していく。
「あんっ」
 彼が付けた跡は、次に来る時までに消えてしまう。
 沙也加は、何故かそれを切なく感じていた。
「あぁっ」
 舌が何度も乳首を掠め、ゆっくりと湿った口内へ入って行く。
 熱い場所で舌を動かされ、沙也加は自然と背中を反った。
「イイの……?」
 彼はいつも沙也加にそう訊く。
 それがセックスだけの意味なのか、彼女には分からなかった。
 ウエストを通った舌が太ももを滑り、秘蕾(ひらい)の密をすくう。
「あっ、はぁっ」
 そのままクリトリスをしゃぶられ、沙也加は体を捩った。
「あんっ、あぁっ」
 いつも、“今日こそ名前を聞きたい”と沙也加は思っている。でもこんな風にされると、全て頭のどこかへ消えてしまう。
「あっ、んんっ」
 クリトリスを丁寧に愛撫され、秘蕾に指が挿いってくる。
 沙也加が二年前に恋人と別れたきりなのは、彼のせいだった。
 会社には、声をかけてくれる男性もいる。それでも、“友達から”と言われても付き合う気になれないでいる。
「沙也加……」
 囁かれた後、秘蕾に避妊具を着けた男性器が触れた。

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