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第10章 明堂 陽菜様 【満月】


「はぁっ」
 徐々に沙也加の入り口が開かれていく。
「あぁんっ」
 奥深くまで侵すと、すぐにグラインドが始まる。
 熱が伝わって来て、沙也加は彼の背中へ腕を回した。
「あんっ、んんっ」
 ベッドの軋む音。
 性器が抜き差しされる生々しい音にも、お互いに耳を犯されるよう。
「あぁっ、はぁっ」
 深い快感の中で、沙也加は何もかも忘れていく。
 彼はその逆に、沙也加のことを思い出していく。
「あっ、あんっ、んんっ、あぁんっ! あぁっ……」
 絶頂を迎えた沙也加を見ると、彼は何度かグラインドしてから彼女の中で果てた。
「はぁっ……。んんっ……」
 性器気を抜くと、彼は沙也加を抱きしめる。
「名、前、は……?」
 沙也加がぼんやりとした頭で訊く。
「沙也加、さん……」
「え……?」
 沙也加は、体を離した彼を見つめた。
「俺、大人に。18歳になったんだよ……。半年前に……」
 彼が訪れるようになったのは、半年前から。
「莉羅(りら)だよ……。あの時、大人になったら、って言われたから……」
「莉羅!?」
 沙也加が高校生になったばかりの頃、友達の弟の莉羅に告白された。その時の莉羅はまだ13歳で、沙也加は「大人になったらね」と言っただけ。それ以来忘れていた。
「どう、して……?」
 彼が来るのは満月の夜だけ。
「満月は、人の心を狂わせるんだ……。講義で、習ったから……」
 沙也加も、過去が蘇ってくる。
 一所懸命に告白してくれた莉羅。そして、五年も想い続けてくれた。
「満月の夜以外にも、会える? 昼間にも……?」
「俺でいいの?」
 満月が照らす中、嬉しそうな莉羅の言葉に、沙也加は微笑みと共に頷いた。


 了



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