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スキンのアンニュイから作品を作ってみませんか?
第2章 弓月 舞 様【君の視線が絡みつく】
そんな彼は黒笑を浮かべている。
これだって、いつものお決まり…。
ユウキくんは頭は悪くないのに、解ける筈の問題をわざと間違えてくる。
それも最後の1問だけ。わざとなのは明らかで。
私以外の人だったら、真面目に解くようにきちんと叱れるんだろうな…。
なのに私は…
「じゃあ間違えたところの解説するね……」
私はこんなに、意気地なし。
「解説?しなくていいよ。それよりさ、もう勉強やめて休憩しない?」
「…ッ…駄目」
ちゃんと注意しないといけないのに…!
「いいじゃん、親父も帰ってこないし。センセが好きそうな映画のDVD借りてきたんだよね」
「……いいから……それより……復習を」
「ちょっと前に流行ったからCMとかで見たことあるかも」
「…っ…ユウキくん駄目、……座って……!」
「どこ置いたっけな。……あー、あった」
「座って…」
「何の映画かは見てのお楽しみってことで──」
「──ッッ 座ってよ!!」
「…っ」
「あ…!!」
注意しなきゃ
注意しなきゃ
そんな事ばかりが頭をぐるぐる回って
私は思わず、声を荒げてしまった。
.
.
.
“ そんな……叫んじゃ った…… ”
腰を上げかけたユウキくんの動きが止まる。
私はしまったという後悔から唇を噛んだ。
確かに注意したかった。けど、こんなふうに叫んでしまったら元も子もない。
「……」
「……っ」
気まずい空気になった。
背中越しに、扇風機が首を振る音が聞こえだす。
それを掻き消さん勢いで窓の外でセミが鳴く。
ユウキくんは喋らない…。
彼がどんな顔をしているのか見る勇気が無く、私は顔を俯かせた。