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第9章 立待月(たちまちづき)

「月哉様、それは……」

「雅に甥か姪が出来るのだ。両親を物心つく前に亡くしたあの子にとって、慈しむ対象にならないだろうか――」

月哉の子供だけであれば、雅は全力で愛するかもしれない――と東海林も思う。

「甥か姪だけが出来るのなら、可能性が無いわけではないのかもしれません……しかし、今の雅様は――月哉様の愛情を独り占めしたくて、堪らないように見えます」

東海林の言葉に、月哉は息をのむ。

「……私だって、出来るならば、今は雅だけを――」

月哉はそう言って、男にしては細い指を組んだ。 

(たった一人の肉親の苦悩に気づけず、他の人を愛する自信がないと言っていた月哉様。辛いのは雅様だけではない。この人だって、人を愛することが怖いのだ――)

まだバーに来るには早い時間だった為、店には二人しかいなかった。

二人を重苦しい沈黙が包む。

「……どっちにしても、産むのは確定なんだ。雅には今晩話すよ」

月哉は椅子を引いて、立ち上がる。

「私は帰るよ、雅が待っている……東海林は?」

「私は……もう少し飲んでいきます」

じゃあ、また明日、と月哉は背を向けるが、すぐ立ち止まる。

「……東海林、ありがとう。お前が居てくれて、私達兄妹は救われている……」

月哉から初めてそんなことを言われ、東海林は少なからず驚いた。

「……私もずっと、雅様の事を見てきました。妹のように、思っているのです――」

同じく月哉の事も見続けてきて、社長としてその圧倒的な存在感と類い稀なる才覚に傾倒してきた東海林だが、今日はそんな月哉の背中が小さく見えた。



翌日、出社した月哉に東海林は呼び出された。

「雅を説得出来た……敦子と結婚する」

開口一番、月哉は用件を言うと、疲労を湛えた顔に困惑の表情を浮かべた。

「……雅様は、大丈夫ですか……?」

東海林は雅の胸中を察すると、やりきれない思いで胸が苦しくなる。

月哉は小さく頷いて見せる。

「兄の私を独り占めできなくなると……泣いて喚いて手がつけられなくなる、そう思って覚悟していたのだが――笑って喜んでくれた」

「まさか……!」

東海林は耳を疑った。

「……まさかって思うよな、やっぱり」

月哉は東海林の反応を見て、溜め息をつく。

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