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第5章 十三夜月(じゅうさんやづき)

「あ……ごめんなさい」

雅が握っていた手を緩めると、東海林も手を離した。

「……大丈夫ですか?」

複雑な表情で雅に尋ねる東海林に、雅は不思議そうな顔をして見つめ返した。

「大丈夫……? 何が?」

東海林は何事も無かった様な顔で問い返す雅に沈黙し、車から降りるその背を、ただ見つめていた。



私室に戻ると人払いをし、雅はリクライニングのきいた書斎の椅子に倒れこむように腰掛ける。

一人になると真っ白だった頭が、ようやく思考という作業を再開し出した。

今迄、月哉が雅に交際している女性の事を話すことは無かった。

勿論雅が気付く範囲で排除したせいもあって長続きしなかったのもあるが、月哉は多忙であった為に交際している期間もそれほど無かっただろう。

その兄の口からあんなことを聞かされるとは――言わせた敦子を憎く妬ましく思わずにいられるだろうか。

しかし、退路が無いわけではない。

まだ「まじめに考えてみる」と言われただけだ。意外に冷静に判断できる自分に、雅は驚く。

机の上に見慣れない郵便物の封筒が置かれていた。

薄い水色の封筒を手に取り裏返すと、田中和子と手書きで書かれていた。

雅は首から提げていた鍵を取り出し、引き出しから医療用のゴム手袋を取り出してはめると、すぐペーパーナイフを手に取り封を開けた。

案の定、敦子の身辺調査報告書だった。

この探偵事務所は、偽名で田中和子という個人名を使うのだ。

焦る手でファイルを開く。



ご依頼の高嶋氏に関する二回目の調査報告をお送りいたします。

ご査収のほどよろしくお願い申し上げます。 

<妹の死因について>

妹・高嶋美耶子(享年十三)は高嶋氏が十五歳の時、二人で揉み合って河川敷の階段から転げ落ち即死。

高嶋氏は自分が妹を殺したと自首するが、目撃者の証言より、男の事について言いがかりを付けてきた妹を振り切ろうとした不可抗力と認められる。

また妹は高嶋氏を後ろから突き飛ばそうとしていたことも確認された。

高嶋氏は中学を出席日数ギリギリで卒業。

後に引きこもり高校を中退、カウンセリングを受ける。

十八歳で高認(旧・大検)に合格、慶應義塾大学法学部を卒業、司法試験合格。

現ユナイテッド弁護士法人へ入社し、今に至る。

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