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第5章 十三夜月(じゅうさんやづき)

(私があの人をそう呼んだのは――昨日よ。しかも昨日、お兄様とあの人はそんな話を出来る状態ではなかった筈だわ。お兄様が私との外出の後にあの人に電話したのか、それとも――)

気付きたくない事に気付いてしまい絶句してしまった雅に、月哉が追い討ちをかける。

「高嶋さん昔、今の雅と同い年の妹さんを亡くされたらしくて。雅に姉の様に思われて嬉しかったのだろうね、泣いていらした」

「……お兄様」

雅は強張る顔になんとか微笑みを貼り付けるのだけで、ただそれだけで精一杯で――。

「雅が慕っているのもあるし……私も高嶋さんとの交際を、真面目に考えてみようかと思う」

月哉の気持ちをこの場で止める事など出来るはずもなかった。

「……そうですか。お兄様頑張って……私、二人の事……応援するわ」

一ミリだってそんなことを思ってないのに、屈辱に耐えながら雅は虚勢をはる。

月哉はそんな雅を誇らしげな顔をして見つめた。

「ありがとう、雅ならそう言ってくれると思っていたよ」

喉が奥から圧迫されたようで、うまく呼吸をすることが出来なかった。

訳が分からなくなり、取り乱してしまいそうになるのを雅は必死で堪える。

(もう……いや――)

「雅様、お帰りになるようでしたら車を回させますが」

背後で控えていた東海林がそう言って差し伸べた手を、雅は藁にもすがるような思いで握り締めた。

社長室を出ると、東海林は雅の手を取ったまま先を歩く。

雅は何も考えられず、ただ引かれるままに任せるだけだった。

玄関ロビーに降りると、自分達から離れた場所にいる敦子と木村の姿が目に飛び込んで来た。

「……あ……お礼渡さなきゃ――」

持っていた紙袋に視線を落としそれを握り締めたまま動かない雅の視界を、東海林がその長身で遮った。

「また今度でも、宜しいのではないですか」

緩慢な動きで持ち上げた顔を、東海林が静かな瞳で見つめていた。

「そう……ね」

そう発してそれでも動かない雅の手を引きながら、東海林が裏の車留めに車を回すように携帯で指示した。

乗せられた車で屋敷へ帰り着くまで、東海林は雅の手を握り続けていた。

屋敷に着き車を降りようとした時、雅はやっと隣に東海林がいて、彼の手を繋ぎ続けていたことに気づく。

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