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ネコの拾い方…
第2章 その出会いがあったから…
「お前はそれでええんか!?お前の未来はお前のもんやろ?お前がなりたいもんになればええやんけ。」
僕の問題だというのに遼は怒りを顕にする。
「僕が跡取りにならなければ藤原が終わってしまう。藤原が終われば今の日本の経済が破綻して国そのものが危うくなると言われても遼は僕の未来は僕のものだと言うの?」
「当たり前やんけ。清太郎が無理なら他の奴が日本の未来を考えたらええねん。清太郎だけが犠牲になるとか考え方がおかしいわ。」
遼の言葉に腹が立った。
「勝手な事、言わないでよ。僕は僕が望んだから藤原の子になるんだよ。僕が選んだ未来を遼に否定される覚えはない。」
嘘だ…。
僕が望んだ?
望むどころか藤原の跡取りの意味すらわからずに不安で戸惑ってるだけの僕だ。
不安だからと完璧な人間を演じる事に必死になってる。
誰よりも勉強して、誰よりも料理人としての修行をする。
大人しくそうやってれば誰もが僕を藤原の跡取りに相応しいと認めてくれる。
僕は遼の様な天才じゃない。
僕は凡人で平凡な未来が欲しかった。
そんな惨めな姿の僕を遼は見抜いてる。
悔しいと感じる。
天才の遼ならあっさりと藤原の当主になれただろう。
叔父は僕が凡人で藤原に相応しくないから何も教えてくれないのだとネガティブな考えばかりが渦巻く。
「悪かったな。俺も言い過ぎたわ。そろそろ風呂にでも行こ。今日の嫌な事は全部洗い流そや。」
遼が小さな子供を見るように僕の頭を撫でて顔を覗き込む。
もう日が暮れていた。
遼の山を降りて少し移動すれば小さな温泉がある。
遼達はいつも、そこでお風呂に入り、夕食を食べてから家へ帰るのだと言う。
そこで僕は初めて人と温泉に浸かった。
そして初めてカレーという食事をした。
遼と食べた初めてのカレーは辛いというよりも苦味のあるしょっぱい味が僕の口に広がる感じがした。